バースデーコンサート

もうずっと前から温めていたコンサートです。わたしの人生節目の昨年(2020年)5月に開催を計画して案内状を発送し終えたところで、予想もしない事態となってしまい、とりあえず1年待つことにしました。そしてことし2021年。残念ながら状況は1年前よりひどくなってしまいましたので、これまでお世話になったみなさまをお招きしてのコンサート開催は、断念しました。これまでに抱いたことのないほどの無念の思いです。ただ、何もしないでこのまま通り過ぎる気はなく、素敵な会場も確保してありますので、わたしのピアノ演奏を動画に収録し、ネット配信してみなさまにお届けします。

さらにこのサイトでは、3歳で初めてピアノと出会ってからのわたしの音楽活動を振り返ります。
収録当日の旧グッゲンハイム邸これまで、さまざまな人生ステージで、いろんな方々に助けていただき、きょうのわたしがあります。春の瀬戸内を見下ろせる神戸・塩屋の旧グッゲンハイム邸で、そんな感謝の気持ちをいっぱい込めて演奏しました。ぜひお聴きください。

収録曲に寄せる想い

ギロック:ワルツエチュード

ギロックはアメリカ生まれの音楽教育分野の第一人者で、子どもための作品を多く残しています。この曲はピアノ教室の生徒さんから、発表会でこの曲を弾いてみたいと持って来られた楽譜に入っていました。この曲は奏法も音楽も難しかったので、わたしも一緒に練習しました。ギロックの作品をいろいろ調べてみると、演奏してみたい曲がいろいろ見つかりました。きょう演奏する「ワルツエチュード」は、このバースデーコンサートのオープニングにぴったりという第一印象で決めました。

モーツァルト:デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲

もう30年以上も前のこと。音大卒業後に、モーツァルトの聖地オーストリアのザルツブルグで夏季講習に参加し、ほんの少しの間ですが現地の学生と過ごしました。そして、帰国後に地元芦屋の山村サロンで初めてのリサイタルを開催したときに演奏したのがこの曲です。

使用ピアノ:DIAPASON

ヨーロッパの学生たちと一緒にレッスンを受けてみると、日本人はミスタッチがほとんどなくてピアノを弾く技術的なレベルは高いけれど、音楽の豊かさは現地の学生のほうがはるかに奥が深いことを思い知らされました。その時に脳裏に浮かんだのは、もって生まれた「原石」が違うということでした。ただの石ころも磨くとぴかぴか光るようにはなるけれど、どんなに磨いてもダイヤモンドにはならないことを知ったことでした。

それまでは「練習すれば何とかなる。何ともならないのは練習が足りないからだ」と思い込んでいました。ところが、わたしの原石は残念ながらダイヤモンドではありませんでした。やがて大きな壁にぶち当たり、暗譜が苦手だったことも要因の一つでしたが、このリサイタルのあとにソロでピアノを弾くことはありませんでした。

しばらくピアノの蓋が閉まったままだったのですが、わたしはわたしの原石を磨けばそれなりに光るわけだし、わたしなりのスタイルで弾けばよいと開き直れるようになるまで、かなりの年数がかかりました。

中田喜直:「こどものピアノ曲」より

わたしのピアノ人生は、3歳のときヤマハ音楽教室幼児科でスタートしました。2年間のコース終了時に専門コースを勧められて受験、元町にあったヤマハ神戸店に週2回4年間通いました。初めてのピアノ発表会で演奏したのが、中田喜直の『こどものピアノ曲集』でした。
今回のバースデーコンサートを企画した時、その当時教えていただいただいた古野初子先生にぜひ来ていただきたいと連絡したところ、もう何年も前にご病気で亡くなられていたことを知りました。小学校へ入学したばかりのわたしに、この名曲と出逢わせていただいたことに改めてお礼申し上げるとともに、先生のご冥福をお祈り申し上げます。

ショパン:ノクターン第8番 幻想即興曲 バラード第3番

現在の師匠である土田晴子先生との出会いは、高校生の時でした。友人に先生の門下生がいて、その友人の発表会に行った時、同い年の人が素晴らしい演奏をされていて、自分とあまりにレベルが違い過ぎていたことがとてもショックでした。果たして音楽の道に進めるかどうか不安になり、わたしのピアノを先生に一度聴いてもらいたいと思ったのがきっかけでした。
先生の最初のレッスン曲が、ショパンのバラード第3番でした。
その初レッスンでは、最初の一音でダメ出しがあって、1ページ弾くか弾かないかで初回のレッスンは終了したことを今でも覚えています。そして、案の定『これでは間に合わない』と言われ、それからの高校生活はピアノ一色!長年の夢だった吹奏楽部の入部もあきらめ、ほとんど勉強もしないでスレスレの成績で高校を卒業しましたが、師匠の情熱いっぱいの厳しいレッスンのおかげで、無事音楽大学に合格できました。その後もことあるごとにお世話になっていて、今でも人前で演奏する前は、必ず「師匠レッスン」を受けています。
ショパンは、憧れだった中村紘子さんの影響もあって、大好きな作曲家の一人です。幻想即興曲はコンクールで、ノクターン第8番は初めてのリサイタルで演奏しました。

シューマン:献呈

最後に演奏するシューマンの『献呈』は、シューマンが結婚式前日に妻クララに捧げた歌曲集の第1曲を、リストがピアノ独奏用に編曲しました。愛が満ちあふれるこの美しいメロディーに、今までお世話になった方々、応援してくださっている方々への感謝の気持ちを込めて、人生節目の記念コンサートの幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。まだもう少しみなさまの前で演奏していきたいので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

協力

動画撮影:三宅 広
写真撮影:藤井由子
衣装:中本敏子 西村セツ子 安岡邦子
演奏立会:松下雅秀(調律師)
編集・校正:大堀龍生